ラノベ「皿の上の聖騎士」1巻を読んで。どうもピンと来なかったのでぼくがモヤモヤしたことを言葉にしてみる。
一時期、ネット広告で「ノベルゼロ」というのをよく見かけました。
「大人になったかたへ送るラノベ」というような、思わず心揺さぶられるような宣伝文句だったので今でも記憶に新しいです。
今回はそこから発刊された「皿の上の聖騎士(パラディン)」という作品について!
1巻を読み終えた時点でのぼくの感想を書いていっちゃいます。
多少なりネタバレ含むのでご注意を。
▼ 読んでない人でもわかるあらすじ。
聖騎士のお姉ちゃんと弟くんが主人公です。
表紙にはデカデカとお姉ちゃんらしき人物が載っていますが、弟くんは姿形もありません。ひでー話だ。
そんでもって、この表紙を飾るお姉ちゃん。
のっけから四肢をもがれて生首だけにされます。本当にひでー話だ。
まぁさすがに生首だけでもごもご動いてたらビジュアルに難ありなので、なんやかんやあってお姉ちゃんの生首は蛇の姿に変えられてしまいます。
弟くんは「こんな姿じゃお姉ちゃんに萌えることもできねー!」とお姉ちゃんを元に戻すため、冒険の旅に出ます。
訂正。お姉ちゃんが主人公といったけどアレだ。ほとんどマスコットキャラポジだ。
具体的にいうとお姉ちゃんの四肢をもいでいったのは霊獣っていうボスキャラです。
各地に散らばってて、そのボスキャラからお姉ちゃんの各部を回収していく……っていうのが目的です。なんだそのジャンプの打ち切り漫画にありがちなやつは。
1巻のあらすじとしてはこれだけ。
2体のボスキャラと遭遇・攻防までを描いております。
▼ 楽しみかたが曖昧でわからない。
ここからはぼくの感想です。
もう見出しのとおり。どこを楽しめばいいやらちょっとよくわからないや。
いきなり辛口な意見になってしまい「なにがそんなに気に入らないんでい! てやんでい!」って思われるはず。
よし、がんばって言語化してみます。
物語の楽しみかたっていろいろあると思います。
例えば「この先どんなに現実離れした世界が出てくるんだろう」っていうファンタジーへのワクワクとか。
例えば「この主人公強い! 苦戦するような強敵出てくるかなー?」っていうバトルでのドキドキハラハラとか。
場合によっては「なんじゃこのおバカな話は!」ってツッコまざるをえないネタ要素なんかも、楽しみかたのかたちだと思います。
ところがこの「皿の上の聖騎士」という作品。それが曖昧すぎて直感でわかりづらい。
ぼくからしたら「カッコつけすぎてる」んじゃないかなーと思うんです。
すごくもったいないなーと思うのが……
この作品は「各国を旅してボスキャラと戦ったり和解したりする物語」なのに、森とか砂漠をぶらりと寄ってはすぐボスキャラと遭遇しちゃうし、
「蛇と人間の冒険」なのに「この姿は不便だなー」とかっていう具体的な悩みとかもないし、
「弟くんが姉嫌い」っていう設定があるのに、「でも俺のお姉ちゃんは美人なんだー!」っていうおまえどっちやねんてなるカミングアウトをするし
(大変致命的なのが、この話がまだ物語序盤の1巻時点でされている点である。もはや姉嫌いとかそんなこと読者は誰も信用できない)
あれ? もしかして1巻でもう打ち切りになったのか……?と疑ってしまいたくなるくらい性急すぎる展開である。
そんでもって、展開が早すぎていろんな楽しめる要素が散りばめられているはずなのに、すごーく薄味になっちゃってる。
もしかしたら既刊の2〜3巻ぐらいまで読めば、怒涛の展開で面白くなるかもしれないですが。……ですが。
物語の序盤ってそんなおざなりにしちゃいかんでしょう。とぼくは思いますよ。
今のところ主人公の弟くんに「大変なんだなおまえ…どうか幸せになれよー」って感情移入できるところがなくて、かといってネタにしてあげられるほどネジがぶっ飛んでるわけでもないんだよなぁ。
姉嫌いでちょっと斜に構えてて、でもお姉ちゃんなんだかんだ好きだからやれやれがんばりますかー。っていうのは、やっぱりカッコつけすぎてるよ。がんばれ!って応援してあげられない。
じゃあお姉ちゃんのほうはどうなの?っていうと、
「身体が元に戻らなくても平気。覚悟ができてる」っていう考え方を彼女はしてるんです。
だから「元に戻さなくちゃ!」って言ってるのは弟くんの固執だけなんだよなぁ。
そーゆー目的意識のある作品だと、「鋼の錬金術士」とかがあると思うんですけど、
あれは「弟の身体を絶対に元に戻す!」ってすごい信念が伝わってくるんですよ。血反吐吐きながらでも戦ってたり、そーゆー良い意味で暑苦しい、泥臭いところがある。だから「エドワードがんばれ! アルフォンスも!」ってなるのよね。
(まぁ見方によってはアレもアルフォンスが鎧の姿で不便してるようには見えないけど、そこはエドワードの気持ちの掘り下げが上手かったから同情的になれた…本当に丁寧だったと思う)
この手の「姉が元に戻らないかもしれない」っていう強迫観念を煽るようなジャンルは、どれだけその必死さが伝わるかが勝負だと思うんです。
ぶっちゃけそこに力入れないくらいだったら下手に奇抜な世界観にしなくてもいい。って思っちゃう。
だって「元に戻らないなら蛇の姿で生活することを考えてみようよ」って打開案が浮かんじゃいますし。逃げ道を作ってしまったら必然性がなくなっちゃう。
まぁいちおう「お姉ちゃんの生首もボスキャラが必要としてて、それが手に入らなかったら国が大変なことになる」って別の理由づけもあるんですが、 「それ君たちにどうしても守らなくちゃいけないことか……?」っていう思いが強い。
というのも、その話が出る直前に、この姉弟ってば国に裏切られてるんですよ。
そもそもお姉ちゃんの身体がもがれたのも国の偉い人たちのせい。
で、弟くんはそのことに怒ってお姉ちゃんと一緒に逃亡してるんですよ。
例えば漫画「亜人」で似たような話があります。
国に指名手配されて逃亡生活を余儀なくされる話。
その話では最終的には戦うんですけど、まずは「どっか田舎に隠れて過ごそう」って冷静に判断するんですよ。だって戦うのって最終手段じゃないですか。殺される確率が一気に上がるし。
そーゆー冷静な判断をせずに弟くんが
「よっしゃボスキャラ1人ずつ倒して身体を元に戻すか! みんな化け物みたいに強くて毎回死ぬ気で戦わないと命ないけど!」っていうんですよ。ちょっと待て。たぶんそれボスキャラと戦わずに田舎で隠遁生活してたほうが生存率高い。
お姉ちゃんもあなたの弟が自分のために命かけるって言ってるんだから全力で止めなさいよ。「ありがとうよろしくね」じゃないよ実は弟くんのこと死んでもいいと思ってるでしょアンタ。
と、そーゆー細々としたことが気になってしまってですね…
RPGゲームだったら「そーゆーもんなんだ。まあ細かいことはいっか、戦うのが目的だし」って脳筋思考でいけるんだけど、
この弟くん、いちおうボスキャラとも冷静な話し合いで妥協案を出せるくらいの器量はあるのであった……
もういっそ「うるせえ! 恨んでるから例え刺し違えても全員ぶっ殺す!」って言ってくれたほうがまだ感情移入できたよ! いいぞ応援するぜ!ってなった。なんで弟くん、冷静にバトルを避ける判断ができるのに自らバトルロワイヤルに飛び込もうとするんだよ……もう支離滅裂でわけがわからないよ…
と、いうわけでですね…
ぼくが「皿の上の聖騎士」を読んでて楽しむ前に置いてけぼりをくらったのは、こんなところでしょうか。
なんか大人になったら視野が多少は広くなるぶん、物語にも入り込めないですね。
だ、大丈夫だっ! もしかしたら次巻あたりで主人公の本性が表れて「本当は旅にかこつけて実の姉を事故で始末する計画を練っていた」とかそんな怒涛の展開があるかもだから……! 期待すべし!
いやその展開になったら無理がありすぎるでしょ…
皿の上の聖騎士〈パラディン〉1 ― A Tale of Armour ― (NOVEL 0)
- 作者: 三浦勇雄
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / メディアファクトリー
- 発売日: 2016/02/15
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (1件) を見る