ラノベ「下読み男子と投稿女子」は丁寧に等身大の高校生を描いた良作!
下読み男子と投稿女子 -優しい空が見た、内気な海の話。 (ファミ通文庫)
今回は最近読んだラノベについて!
タイトルは「下読み男子と投稿女子 -優しい空が見た、内気な海の話。 」
下読み男子と投稿女子 ?優しい空が見た、内気な海の話。<下読み男子と投稿女子> (ファミ通文庫)
- 作者: 野村美月
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / エンターブレイン
- 発売日: 2015/08/29
- メディア: Kindle版
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ちょっと長いタイトルですね。
ただ、表紙絵のほっこり温まるような雰囲気を見てみると、ラノベ界隈流行りの「どれだけタイトルを長くするか選手権」とはちがうものかな、となんとなく察しがつきます。
タイトルにもある「空」「海」にもかけて、青春真っ盛りな青を基調とした表紙絵です。すっごくキラキラしてますね。これは期待!とれぐるすはポチります。
おおう、この絵柄から漂う空気感、すばらしすぎる…。
こんなクールビューティがクラスメートなんて羨ましすぎるじゃないですか。
◆ 純真でもどかしい、そして懐かしい
まずはカンタンなあらすじから。
「下読み」というなかなか珍しい仕事を題材にした本作ですが、そんな縁遠いようなお話じゃありません。ようはラノベの投稿作品を品評するアルバイトhttp://kirby-ex.hatenablog.comです。
ラノベを読みふけるのが大好きな少年・青は、下読みというまさに天職についてます。ある日、それを通じて、ラノベを熱心に投稿しているクラスメートの女子・氷雪と関わりを持ち出したところから物語は始まります。
「ラノベの新人賞を受賞する」という目標に向かう氷雪と、それを手伝う青による、ラノベ創作のスポ根モノです。
そして、もちろん急接近した2人は異性として意識しちゃったりもして…というちょっと照れくさくなるようなスポ根&純愛物語であります。
さて、本作で描かれるのは、恋愛モノでは王道にして覇道。「心のすれ違い」を丁寧に描いていきます。
純真なるこのブログの読者さま方なら、きっと一度はこんな経験があるはず。
「なんであの人はこんなに世話を焼いてくれるんだろう?」「実はかわいそうだから仕方なく付き合ってくれてるだけなのかな?」
「趣味が共通ってだけしかあの子とは繋がりがないんだよな…」「本当はあの子とおれなんかが釣り合うわけないのに、迷惑かな」
こんな思い込みをして自分から勝手に壁をつくっちゃうこと、一度はありますよね。この物語の主人公たちもこんなふう。いたって等身大の高校生として描かれています。
素朴でピュアでちょっぴり臆病もの。そんなキャラクターたちですが、読んでいくうちに身近に感じること必至!
◆ 熱いだけじゃない! 生身の人間の悩みも暴く
ちょっとだけ、れぐるすが個人的にすごく共感した部分を引用してみます。
青は 、他人を強く嫌いになったことはない 。
誰とでも気軽に話せるし 、友達になれる 。
でもそれは 、誰のことも特別に好きではないということではないかという不安が 、胸の奥にひっそりと存在していた 。
たとえ誰かを好きになっても 、中二のあのときと同じように 、より強い想いを相手がいだいていたら 、自分は譲ってしまうのではないか 。
この人でなければ絶対にダメだというほどの強い感情を 、自分は生涯持つことはないのではないか 。
─ ─風谷くんは … …嫌いな人って 、いないでしょう。
─ ─どんな稚拙でつまらないお話でも 、楽しめるでしょう … … 。
氷雪にそう問われたとき 、心臓が嫌な感じにドキリとした 。
〜〜〜中略~~~
そんな自分をひそかに恥じていたから 、段ボ ール箱につまった多種多様な投稿作が持つ 、情熱に惹かれるのだ 。
「どんな作品も楽しめる才能」を持っていると周囲から言わしめる青。
それは、どれだけ稚拙な作品でも読まなければならない、という下読みのバイトをするものには羨ましい才能です。
しかし、青による独白でこの才能とは彼にとってコンプレックスの裏返しであることが吐露されます。
「全部平等に愛せるってことは、なにも特別に感じないからじゃないか?」と。
そして、恋心に揺れる青は悩みます。「彼女のことをそこまで特別に感じているのだろうか」
れぐるすも青の考えというか、そういう「特別がない」という感覚には共感します。
ぼくだってわりと今でもそうです。手に取る本すべてには良いところがあって、そんな良いところをなるべくすくい取ってあげたいな、といつも思いながら読んでいます。
そう思う理由はいくつかあるんですが、例えば同じように作家を志して文章書いてるぼくにとって、本を書いてる人の苦労がわかるからとか、せっかくお金を出して買ったのだからなにか得るものがほしいとか。
でも、一番の理由は自分のコンプレックスの裏返しなのかなと思います。自分には強い執着だとか芯がないから、いろんな物語に隠れた作家さんごとの「個性」に惹かれるんだろうなー。
あと、恋愛に奥手なのもたぶん青と同じ気持ちなのかもしれないですねー。
◆心理描写はもちろん、伏線も丁寧にひかれてますよ!
本作を語る上で忘れちゃいけないのが、緻密な伏線!
伏線というか、そんな仰々しいものでなくても、けっこうあとから意味を持ってくる「覚えておいたらちょっぴり幸せになる話」が随所に散りばめられています。
ぼくが好きだったのは冒頭のことシーン。
「 … …オレは彼女と遊園地行って 、水族館行って 、映画だ 」
「なんだと !このリア充め !てか 、おまえ 、なんでしかめっ面なんだよっ 。デ ートなんて面倒くさいぜって顔してんだよ 。嫌みか 」
「くそっ 、オレも彼女欲し ー !ゴ ールデンウィ ークにいちゃいちゃデ ートして ー ! 」
「青はどうすんだ 」
「おれ ー ?おれは家でまったり 」
「そ ーか !いいよな 。家でゆっくり体を休めるのも 」
「だなっ 、たまってる D V D消化するとか 、ゲ ーム三昧とか 、有意義だよな 」
「うん 、めちゃ楽しみ 」
四月に青と同じクラスになった連中は 、気のいいやつばかりだ 。
もうホント、こういうやり方すごく好きです。
おばあちゃんの話とかね。
たぶんこのへんは読んでないと本当にさっぱりだと思うので、ちょっとでもご興味あればすぐ読んでほしいってくらい!
この気持ちをだれか共感してくれー!
ではでは!